既製品をカスタマイズして障害児服を作る
シュウは脳性麻痺の影響による筋緊張により、身体が硬い。背骨は側弯気味になり、足は常に突っ張っている。日々、リハリビは受けているが、どうやら進行性のものらしい。医師に確認したわけではないが、日々の観察からそう感じる。少しづつではあるが悪くなっているのである。乳児期はマッサージして筋肉をほぐしてあげると両膝はくっつけることができたが、現在は45°ほどまでしか閉じることができなくなった。
足はこれ以上閉じることができないし、膝も曲がらない。
そうなってくると、大変なのが衣服の脱ぎ着だ。足がこうも開いていると、ズボンの裾が片方しか入らない。腕にも緊張はあるが、腕は下がっているため、Tシャツならなんとかなるのだが、長袖となると、途端に難しくなる。オーバーサイズB-Boy系ファッションならどうにかなるのだろうが、kikuo家は江戸時代に上総地域で農耕と金貸しで財を成し、幕府から地域的支配権を与えられた豪族の家系なので、B-Boyのような格好は血が許さない。文化と伝統を重んじ、平均的な日本人からすると過剰とも思われるほどにTPOを意識しなければならない生活様式は時に息苦しさが付きまとう。エスタブリッシュメント層にも相応の悩みがあるのだ。
というわけで、西松屋で平均的な日本人の幼児が着る冬服を買い込んで(豪族の血筋は西松屋を許すのか、というツッコミが聞こえてきそうだが)、カスタマイズすることにした。
カスタマイズするといっても、もちろんkikuoが夜なべをするのではなくて、隠居している母が行った。
母は青森は八戸市に住んでいる。そこへ、千葉県から平均的な日本人の幼児が着る西松屋の冬服を送り、バイアステープとスナップボタンはAmazonで購入、届け先を母宅に指定し直接送った。更に別便で指示書を送り、簡単に電話で打ち合わせ、完成を待った。母の労働力を搾取している気がしないでもなかったが、その点には触れないことにする。孫は目に入れても痛くないと言うことわざもある。自己の正当化に努めた。母への対価はカスタマイズされた洋服を着用したシュウの写真と、これからも元気に成長していくことだろう。
で、送られてきたのがこれ。
とても着せやすい!
パイが少ないので、健常児の洋服と同じ値段で、同じように西松屋やユニクロでは購入はできないが、ファストファッション店で安価な既製品服を購入し、カスタマイズするのは良いかもしれない。少し手間をかければ、それなりにお洒落も楽しめるものだ(手間をかけたのは母だが)。
気道確保の関係で体重は8kg以上に増やすことのできないシュウ。3歳児ではあるが、こうも小柄だと赤ちゃんだと間違われることも多い。しかしロンパースから脱却すると、乳児ではなく、幼児感がグッと出てくる。見た目は非常に重要である。
支給したバイアステープが足りなくなり、母が自作した。畳のヘリみたいな柄だ。
送られていた衣服と共に、手紙が入っていた。
『お姉ちゃんたちと違って、赤ちゃんの時からシュウちゃんには何も出来なかったので、洋服作ることができて嬉しかったです。いつでも作るので、言ってね。
みんな風邪ひきませんように。』
泣ける。
俺、この人から本当に生まれてきたのかと疑問が生まれた。
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○今日の一枚
先生『仮装、かわいいですね〜』
kikuo『私服です。』
先生『…‥。』