障害者と健常者の接点を探る

主夫による脳性麻痺の子供の話。ご意見ご感想頂けると大変嬉しいです。m.jigglerアットマークgmail.com

アイディアと生活

 空気が乾燥するこの時期になると、シュウはよく熱を出す。冬の風物詩だね〜としみじみ言ってみても、冬を満喫するイベントになるはずもなし。12月に入り、発熱で2度は臨時の往診になっただろうか。幸いにして大事には至らず、自宅療養で済んだ。入院になると家族全体の生活リズムが崩れるため、入院となるか、自宅での経過観察で行けるのかの判断は、親にとっては重要である。

 

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 「自宅で様子を見ましょうかね」と主治医。炎症の値も低く、呼吸状態も悪くない。その診断にほっと胸をなでおろす。週末ゆっくり過ごせば、来週からまた児童デイにいけそうだねと妻と話していると、これを面白く思っていない2人がいた。次女と長女だ。あ、そうか。日曜日は家族でお出かけする予定だったっけ。心中お察しいたします。次女はこぶしを握り締め、わなわなと怒りに震えている様子。「ホント、しょうがいない奴だなーー!!」とシュウのケツをバシバシ叩いている。不規則なリズムが、機嫌の悪さを表しているようだ。長女は事情を理解できる年ごろではあるが、まだ8歳。寂しそうに時計を眺めていた。

 3人の子ども達とは平等に接したいため、「シュウは体が弱いんだから、仕方ないでしょ!我慢しなさい!」とは口が裂けても言えない。うーむ、どうしようか。考えあぐねていると、長女の目が光りだした。これが漫画であるなら、キラーンという擬音が挿入されていたはずである。

「ねーパパ!こーゆーのはどう?」ごにょごにょごにょ。

うーむ、どうしようか。先程とは全く違う意味でうーむ。でもまぁ…‥あまり気が進まないが仕方ないか。この日以来、kikuo家ではこの遊びが流行っている。

 

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題して庭キャンプ。

ネコの額ほどしかない庭に、登山用のテントを目一杯張る。夕ご飯は妻が作った弁当をテント内で食す。寝袋にくるまり、朝を迎える。ただそれだけ。BBQや焼きマシュマロ、焚火などの定番イベントは一切ない。もちろん、寒い。首都圏とはいえ、朝晩は氷点下近くまで冷え込むから当たり前だ。地面には砂利が敷き詰めてあるため、いやァ、砂利がツボに効くんだよね…‥とはもちろんならない。痛いだけで、寝心地は最悪。しかし、即席の非日常空間に2人は大喜びだ。うるさい姉がいなくて、シュウも快適そうである。こういうのを一石二鳥というのだろうか。

 確かに少し恥ずかしくはある。22時頃だっただろうか。お向かいに住むおばあちゃんに、「あらあら、何やってるのかしらぁ」と声を掛けられ、しどろもどろになった。ぼさぼさ頭で朝、テントから這い出たところを隣の奥様に目撃され、「はい、ジャンガジャンガジャンガジャンガジャンガジャンガジャンガジャンガジャンガジャンガジャンガジャジャ~」とアンガールズの物まねをして切り抜けたこともある。

 しかし、3人の接し方へのバランスを考えた時、庭キャンは「アリ」だと思う。お金はかからないし、シュウに何かあってもすぐに駆け付けることも可能だからだ。さとうのご飯が出来上がるよりも早くたどり着くので、安心して子供たちと遊ぶことができる。生活の困難さばかり注目され、諦めることだけが伝えられることも多い医療的ケア児との生活であるが、アイディア次第で中々、楽しむことができるなと思うのである。鳥を手にしたのは子どもたちだけで、kikuoには石がぶつけられただけな気がするが、子どもたちが楽しければまあいっか。

 

テントの中の様子。

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キャンプ関係ないやん。

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プロフィール

kikuo_tamura

社会福祉士/非営利組織専門の広報戦略コンサルティング会社 JIGコンサルティング代表 https://www.jig-consulting.com/

2016年6月、重症新生児仮死にて長男が生まれたことから、医療的ケア児関連に特に興味があります。

趣味は登山、トレイルラン、キャンプ、子どもを追い回すこと。千葉県生まれ。
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