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地元のともだちとフィリピン人のともだち

「肩を作りたいからキャッチボールやらないか?」と、意味がよく分からないLINEが入ったのは先週の水曜日だった。WBCに感化されたのだろうか。サラリーマンのこいつに登板の予定なんてあるはずがない。そもそも野球経験もない奴が何言ってんだかと思ったが、その話にのることにした。

 

LINE主とは小学生からの付き合いである。どんなタイミングだかよく分からんが、ふっと思い出したような連絡がきて、僕のタイミングが合えば会う、という関係が10年近く続いている。今は離れて住んでいるが、特に連絡を取り合うこともなし。盆正月ゴールデンウィークでさえも、帰省するから遊ばない?とわざわざ約束を取り付けたりはしない。年賀状で近況を報告し合うわけでもないので、共通の友人を通してどこに住んでいるのか判明することも多い。

 

前回会ったのは昨年の6月18日、彼の結婚式に出席した時だった。その前に会ったのはいつだったっけ、、、と考えてしまうほど長いあいだ顔を見ていなかった。元々女っ気はなく男とツルんでゲラゲラやることが生き甲斐みたいな奴だったから、招待状送りたいから住所教えてと連絡が来た時には驚いた。

 

6月18日といえばシュウはまだ【医療に生かされている】状態だった。生後8日。気管挿管されてるわ四肢にチューブが繋がれてるわで、そもそも意識すらない。いつ命が途絶えてもおかしくないと言われ続けていた。妻は一緒に入院していたので、孫の危機を聞き駆けつけていた祖父母にお姉ちゃんたちをお願いして、結婚式に出席した。

 

新郎にはシュウが危篤状態であることは伝えなかった。ハレの場で余計な心労をかけたくはなかったし、そんな日に僕も心配されたくはない。いつものようにゲラゲラやって、ニヤニヤしながら写真を撮り、オラオラと酒を煽り、式が終わった。友人の間では、こいつは結婚するはずがないと合意形成されているような奴だったので、その反動から大いに祝福を受けていた。僕のくらしと真逆の世界が広がっていた。

 

共通の友人は多いから、彼の耳にもシュウのことが届いているに違いない。だけどコンビニで飲み物を買っている最中に、移動の車内で、バッティングセンターのベンチで、その他一緒にいる時間に、シュウについて聞かれることはなかった。今までと同じように眉唾話に花を咲かせ、嘘つけー!と突っ込んで、帰路についた。いつものこいつ。そういえばキャッチボールしたっけ。だから僕も、話さなかった。

 

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フィリピン人の友達がいる。

 

彼女は日本語があまり上手くない。当然僕はタガログ語は話せないし英語も達者ではないので、コミュニケーションには苦労する。

妻が妊娠したことを報告すると自分のことのように喜び、会うたびにいつ産まれるんだとカタコトの日本語で聞かれた。

だからシュウのことは正直に話した。出産時のトラブルで脳がダメージを受けたこと、ミルクが口から飲めないこと、泣き声をあげないこと、成長しても元気に走り回ることはないこと。グーグル翻訳を使って、1つ1つ伝えていった。

 

彼女は「ナンデイイ人ナノ二コンナコトニナルノー」と拙い日本語と独特のイントネーションで嘆いていた。自身も二児の母であるため、僕たちが受けた感情に寄り添っているようだ。頭を左右に振りながら深いため息を漏らしていた。神様は本当にいるのかよと言いたげな顔だった。クリスチャンなのに。

 

その後は赤ちゃんどうだ?と会うたびに聞かれる。私も良くなるようにお祈りするよーとか、ママの体調は大丈夫なのかとか。写真を見せろ見せろとうるさい。語頭に「あのーなんてゆうの、、?」付け、カタコトの日本語で声を掛け続けてくれる。

 

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友達の形にも様々ある。育ってきた環境、出会ったひと、影響を受けたもの、信じているもの、それらを踏まえて、僕との関係が築かれている。

 

年齢も性別も国も違い、僕たち家族に対する態度も違う2人だが、彼らが持っている感情の形は共通しているようだ。感情が相手に伝わっていれば言語化するかしないか、表現の美しさ拙さは大した問題ではないのかもしれない。2人を見ているとそんなことを考えるのである。

 

ともかく良いともだちに、恵まれているのは確かだ。

 

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プロフィール

kikuo_tamura

社会福祉士 / ソーシャルワーカー

社会福祉法人 松の実会 評議員 / NPO法人 こども子育て・発達支援研究会 監事

H28年6月、重症新生児仮死にて長男が生まれたことから、医療的ケア児関連に特に興味があります。

趣味は登山、トレイルラン、子どもを追い回すこと。1985年千葉県生まれ。
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【m.jiggler@gmail.com】