障害者と健常者の接点を探る

主夫による脳性麻痺の子供の話。ご意見ご感想頂けると大変嬉しいです。m.jigglerアットマークgmail.com

福祉のマーケティング戦略〜あなたの想いを伝える技術〜③「マーケティングのギョーカライズ」

前記事ではマーケティング理論の前に、「夢に焦点を当てよ」という提案をした。

 

kikuo-tamura.hatenablog.com

 そして夢の実現について①ビジョン、②ミッション、③理念、3つに分解し説明したわけだが、この夢を伝える技術がマーケティング戦略だ。

 

 営利企業向けに抱えれたマーケティンング本は巷に溢れている。マイケルポーターやフィリップコトラーの経営戦略論、ランチェスター戦略や孫子の兵法などなど、一読するばなるほどー!と唸るものばかり。しかし、である。個別の理論、ツールはどれもすばらしいのだが、いざ福祉実践で使おうとなると頭を抱えてしまうのだ。その理由は、根本の評価指標が違うのと、横文字が乱用されている文を見るとパブロフの犬よろしく条件反射的にチッ…‥自意識高い奴の書く自己陶酔型マスターベーション文章かよ…‥この俗物がッ!!とkikuoが思ってしまうからだと考えられるが、ようは営利企業と非営利企業では事情が異なるので、使用するには改変が必要だと激しく感じた。したがって福祉業界でも応用できるように、様々な理論を統合し生み出されたのが、kikuo流福祉マーケティング理論である。ある国で作られた製品やサービスを、別の国や地域で販売する際、その国の言語・慣習に合うように製品を修正・改訂することをローカライズと言ったりするが、福祉業界に応用するということで、マーケティングのギョーカライズといったところである。

 

では福祉マーケティングは、どのように考えていけばよいのか。

その答えが、以下の写真である(手書きですいません)。

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①ターゲット→②資産→③強み→④商品(サービス)→⑤広報

⑤まで検討したら全体を見返し、整合性が取れているか確認する。

これだけ。単純でしょ。

でも整合性が取れた戦略はとても強力なんです。

 

ちなみに番号を振っているのには、訳がある。この順番に沿って考えて欲しいのだ。

マーケティングを考えるにあたり、kikuoは一にも二にも、ターゲットありきだと考えている。だから出発はターゲットの設定。答えは簡単で、ターゲットを決めた方が、マーケティング戦略が立てやすいからである。

営利企業の場合、顧客が先か(マーケットイン)、商品が先か(プロダクトアウト)、という議論の決着は今だついていないように思う。例えば、現代社会はニーズが多様化、細分化しているためユーザーのニーズを把握し、顧客が望むものを作るべきという考え方(マーケットイン)が一般的であるが、故スティージョブズが「人は見せてもらうまで、何が欲しいか分からないものだ」と言っているいるように、まず商品を作り、提案するというプロダクトアウト的な発想が是とする考え方も多く残っている。

しかし、ユーザーアンケートを根拠にした商品だろうが、職人のこだわりの一品だろうが、売れなきゃそれで終了である。どれだけn数を増やそうが、職人の技術が高かろうが、着想がどちらにあろうと、お客が買わなければ意味がないだ。

 

非営利組織はどうだろうか。

非営利組織の仕事は、任意の課題を抱えているという点に共通項を持つ集団が、利益を得られるように活動するという前提がある。シュウでいうと、「通園」や「児童デイ」と言われるものは、児童福祉法に規定された「児童発達支援」と言われる公的サービスで、「心身の成長や発達に心配のある小学校入学前の子ども」しか受けることができない。これは最も分かりやすい例だろう。「心身の成長や発達に心配のある小学校入学前の子ども」やその家族のニーズを充足するような支援を提供すれば良い訳だから、考えやすい。

では、ターゲットが法律を根拠とするものでなかったり、課題解決のために社会に対して広く支援を呼びかけなければならない領域はどうだろうか。

 

例えばあなたが発展途上国の少女に対する差別や偏見をなくす活動をする団体に勤めているとしよう。少女たちを救うにはお金が必要で、そのお金を寄付で集めようと企画している。その際に、以下2つの方法ではどちらが効果的だと思うだろうか。

 

①、募金箱を抱えて駅前に立ち、不特定多数に対して「途上国で困っている人がいるので助けてくださーい!」と訴える。

 

②少女と同年代の子どもを育てている稼働年齢層の女性や、子育てが落ち着き時間にも金銭的にも余裕のある女性に絞った募金活動を行う。

 

いかがだろうか。

みなさん、圧倒的に②の方が効果的だと考えているはずだ。

 

実際、途上国の女性支援をしている団体「プラン・インターナショナル」のHPを見ると、上記②のターゲットを絞った(と思われる)寄付の呼びかけをしてるのが良くわかる。

https://www.plan-international.jp/girl/why/

(途上国の女性と、自分自身のライフサイクルを比較するよう促している点や、結婚、出産、家事育児といった女性に絡む課題に焦点を当て訴求している点から、そう類推した)。

 

ターゲットを決めると、あなたの活動は刺さりやすくなる。逆に言うと、ターゲットを絞らないと誰にでも分かるような平易で抽象的で道徳的な表現となってしまい、その結果、誰の印象にも残らないということが発生する。

 

このように考えれば、ターゲットを縛る重要性が理解いただけると思う。そしてこの視点を持ち、福祉業界を眺めてみると…‥みなさんはどう考えるだろうか。

 

以上が、ターゲットを第一と主張する理由である。

まずターゲットを決定し、自身の資産、強みを分析する。そして商品(サービス)を決定し、ターゲットにそれを伝えるこの流れが重要なのだ。

 

次に、①~⑤の概略を述べる。

 

①、ターゲット

 

営利組織であれば、顧客という明確なターゲットがある。では非営利組織のターゲットとは誰だろうか?あなたのターゲットは誰だろうか?

サービス受給者?もちろんそれは当然だ。しかし社会的課題の解決、ひいては夢の実現こそが非営利組織の評価指標と捉えるならば、「支援者」と「社会」もターゲットとして想定しておかなければならない。

 

②、資産

資産とは専門的な知識、資格である。看護師、医師、弁護士、社会福祉士などの国家資格は資産となりうる。また、特殊な環境から得られる経験も資産となるだろう。kikuoで言えば、重症新生児仮死で生まれ、医療的ケアが常時必要なこどもを育てているという経験は、資産である。

あなたの資産はなに?

 

③、強み

資産から生み出されるもの、それが強みである

資産と強みの関係を株で表すと、所有している株が資産、そこから生まれるキャッシュ(インカムゲイン)が強みだ。カレーで表すと、本場インドはカルカッタの五つ星ホテル「マハラジャ」の総料理長であるビンダハニ氏に従事し、修業を積んだ経験が資産で、その経験を基に地元で本格インドレストラン「ビンディ」を開業し看板メニューとなった本格インドカレー「チキンバターマサラ」が強みである。要するに強みとは、ターゲットから「認識されるもの」でなければならないのだ。

また、強みとは相対的なものという点もお忘れなく。

 

 

④、商品(サービス)

②と③を踏まえて、①で設定したターゲットの利益になるような商品(サービス)を考えるべし。

 

⑤、広報

ターゲットに伝わる言葉を使いましょう。

①の通り、ターゲットは3つの属性に分かれる。したがってそれぞれに対して、違った言葉や媒体を検討すべし。

 

概略は掴んでいただけただろうか。

次回更新時に具体的に検討していくので、しばしお待ちください。

分かり辛かった点は是非指摘して欲しい。また、なんか理論的に破綻してるよ点もあったら教えて頂きたい。もちろん自身の仕事で活用したいのでアドバイス頂きたいという要望があれば大歓迎である。

 

では次回はターゲット設定について、詳しく述べていく。

(週一更新の目標が早くも崩れている、、、)

 

◼︎今日のシュウタソが学んだこと

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メリークリスマスの熨斗紙は蝶結び。

 

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プロフィール

kikuo_tamura

社会福祉士/非営利組織専門の広報戦略コンサルティング会社 JIGコンサルティング代表 https://www.jig-consulting.com/

2016年6月、重症新生児仮死にて長男が生まれたことから、医療的ケア児関連に特に興味があります。

趣味は登山、トレイルラン、キャンプ、子どもを追い回すこと。千葉県生まれ。
ご意見、ご質問など、メールをいただけると、とても嬉しいです。
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