福祉のマーケティング戦略〜あなたの想いを伝える技術〜②「あなたの夢はですか?」
「 あなたの夢は何ですか? 」
成人に質問し、即答できる人はそういないだろう。子どもの頃は夢を持つことが推奨されるが、大人になると、何言ってんだか、、、と冷笑される現代。夢を持たなくなったのはいつからだろうか。
戦争のない世界を実現したい、偏見のない社会を作りたい、子どもの悲しまない社会にしたい、年齢に関係なく活躍できる社会にを作りたい、、、別に道徳的なことでなくてもよい。お金持ちになりたい。誰からも尊敬されたいなど、エゴを前面に打ち出す夢でもよい。
「 あなたの夢は何ですか? 」
福祉のマーケティング戦略を伝えると言っておきながら、まず初めに、なぜ夢の話をしているのか。それは、福祉の世界こそ夢を語らなければならないからである。
福祉の世界はとても閉鎖的だ。代謝も競争もあまりない。行政からの委託、大儲けできない仕組み、無料思想。これらを背景に夢だけを語るため、世間とずれていると揶揄されることも多い。二宮尊徳は「道徳なき経済は罪悪であり 経済なき道徳は寝言である」と言ったが、この言葉は福祉領域の世界にいる人ほど覚えておかなければならない言葉である。
他方、福祉領域の活動は、「収益」が評価基準となりえないのも事実である。その代わりとなる評価基準こそが「夢」だと考えている。したがって夢も語らず、お金もないでは、福祉業界に生き残る道はない。「夢の実現」に焦点を合わせなければ、その活動に社会的な評価を与えることができないからである。
では、「夢の実現」とは何か。kikioの意見では、下記公式が成り立つと考えている。
夢の実現 = ミッション × ビジョン × 理念
また横文字出したよと思わないで欲しい。あやふやな定義のまま横文字を使うのは、徒党を組んで安心する奴らのやり方だ。kikuoはそんな無責任なことはしない。次の章から、ミッション、ビジョン、理念ついて、考えを述べていくので安心されたし。
1、ミッションとは解決したい課題
P.F.ドラッカーは著書「非営利組織の経営」の中で、こう述べている。
非営利組織はミッションのために存在する。それは社会を変え人を変えるために存在する。非営利組織がミッションのためのものであることこそ、忘れてはならないことである
福祉の仕事は非営利の最たるものだ。したがって、ドラッカーの言葉を借りるならば、福祉はミッションのために存在するということができるだろう。
では、福祉の役割とはなんだろうか。その役割は、営利企業と国が担うことのできな部分にある。すなわち福祉の仕事とは、利益と社会的課題解決とのバランスが取れていないものだとkikuoは考えている。
福祉がミッションのために存在すること、そして、福祉の仕事が常に社会的課題解決に立脚していことを考えると、ミッションとは、あなたが解決したい課題ということができる。
障害福祉領域で仕事もしくは、サービスを利用していると、「課題」というのは多く目にすると思う。まずは自分自身が課題だと感じることを書き出してみていただきたい。
2、ビジョンとは目指している社会
さて、あなたが課題だと感じることは、必ず「何か」と比較している。例えば非正規労働者の問題は、正規労働者の条件と比較しているし、シングルマザーの問題は、父母がいる世帯と比較している。障害者という言葉も健常者の対比だ。そもそも日本国憲法さえ、比較を取り入れている。例えば生活保護の根拠とされる憲法25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」も社会的な尺度が存在しているからこそ、このような表現になっている。つまり、意識している、していないにかかわらず、比べる「何か」がなければ、課題に感じるはずはない。課題とは常に相対的な評価なのである。
そして、この比べる「何か」とは常に理想的な状態を指している。この理想的な状態がビジョンである。すなわちビジョンとは「目指している社会」といえる。
「目指している社会」
そんな青臭いこと考えたことないよーとしり込みする方もいるかもしれない。しかしそれはまだ、あなたの想いが言語化されていないだけだ。あなたの中に「目指している社会」は必ずある。繰り返しになるが、課題とは相対的な評価である。あなたが今、課題に感じていることがあれば、「目指している社会」と比較していることの証明だ。
先ほど書き出した課題を俯瞰していただきたい。
何か共通するものはないだろうか?自分自身の原体験を基にした課題設定ではないだろうか?注意深く観察していただきたい。そして深く、心に耳を傾けて欲しい。あなたはすでに、「目指すべき社会」を知っているはずである。
3、理念とは行動指針
「企業理念」
社長室のど真ん中に、威圧するような明朝体で掲げられているあれである。美辞麗句を並べただけに見える道徳的な言葉は、その真意とは裏腹に排他的な印象を受ける。下請け業者を絞らなければ利益をあげることができない業務内容と、社長が掲げる企業理念がどうしても結びつかず、市議選の選挙ポスターを見つめるような心持ちで企業理念を眺めていたーーーkikuo、24歳のことである。
しかし、障害福祉領域に転職し、この業界をある程度俯瞰できるほど経験を積んでみて気づいたことだが、障害福祉領域ほど日々の活動に理念が必要な業界はない。社会的弱者を対象としたサービスは、ともするとパターナリズムに陥りやすい。苦手なところをサポートしつつ、残存能力を維持させつつ、可能性を信じつつ、権利擁護しつつ、とバランスを取るためには、誰でも納得するような行動指針が欠かせないのだ。そう、理念とは行動指針である。
真剣に仕事に取り組んでいる人ほど、日々の業務の中で、悩み、迷い、苦しむことが多いはずである。その時に立ち戻り、判断基準となるもの。それが理念(行動指針)である。
理念を、ビジョン、ミッションの関係性で捉えると、以下のようになる。
ビジョン(目指している社会)を実現するために、ミッション(解決したい課題)を達成しなければならない。ミッション(解決したい課題)達成に向けた日々の行動は、理念(行動指針)を基にするもの。
例えるなら、山登りだろうか。
山頂を目指すには、道中様々な困難が発生する。斜面を通過するには三点支持で進む必要がある。冬は水場が枯れるためバーナーで雪を溶かし、水を確保しなければならない。もちろん地図とコンパスを使い、ルートから逸れていないか、逐一確認も必要だ。
登山でいう山頂がビジョン、発生する困難がミッション、地図とコンパスが理念となる。道中は険しい道が続くかもしれない。天候も荒れるだろう。しかし地図とコンパスを持って、あなたが知恵を振り絞れば、必ず登頂できるはずだ。
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この記事を読み終えた後、あなたの夢をビジョン、ミッション、理念に分解して、改めて問い直していただきたい。そうすることで、あなたが今行なっていることはより大きな意味を持つはずである。
kikuoの夢、それは
「私が持つ知識、知恵、経験を共有し、社会課題の解決に挑む人の一助になること。と女子にモテること」
である。
【次回更新:12/22(土)】
参考
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- 作者: P・F・ドラッカー,上田惇生
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