障害者と健常者の接点を探る

主夫による脳性麻痺の子供の話。ご意見ご感想頂けると大変嬉しいです。m.jigglerアットマークgmail.com

重症新生児仮死児の入院中における、家族の動き

「もう今日中に帰っちゃいましょうか」

主治医が提案してくださったので、二つ返事で帰ってきた。

 

昨日は、三カ月に一度定期的に行っているEDチューブ(ミルクを注入するために、鼻から十二指腸まで入っている管)の交換日であった。本来であれば一泊二日の施術である。具体的には入院初日に交換し翌日まで経過観察、その後退院となるのだが、今回は即日退院となった。感染症の時期なのでベットを空けておきたいのだろうか。そういえば小児外来の待合室は、椅子に座れないほど活況だったっけ。

 

そうは言っても一年前であれば、裏金でも渡しているのかよと疑われてしまうほどに最優先に入院していた。入院生活も、病室はナースセンターの正面でしかも個室というあまり有り難くないVIP待遇であったので、身体も大きくなってきたし大丈夫でしょうという主治医の判断もあったのだと思う。成長したなあ。

 

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子どもが入院となる場合、多くの病院では保護者が付き添いとなる。今回のように体調悪化ではない入院の場合が特にそうなのだが、付き添いは正直、暇だ。シュウは点滴が繋がっているため自由に動かすことはできないし、かといって目を離すこともできない。基本的に付き添いは妻が行ってくれるのだが、たまにkikuoが付き添う時は、気付くとポカンと口を半開きにして、ぼーっとしてしまうのである。

テレビカードを購入すれば、暇つぶしにテレビの視聴をすることもできるが、居室には他の患者さんもいる。(kikuo家にはテレビがないので)普段見ることのできない面白いバラエティを拝見できたとしても、声を押し殺して笑うことになる。したがってこの状況をはたから見ると、真夜中の病室から「くっくっくっ、、、」と聞こえてくるわけだから、ナースコールを押されたとしても不思議ではない。これだけは避けなければならない事案である。

そんなわけで付き添いの時間をどうやり過ごすかはkikuo家にとって、恋の方程式と同様にいつまでたっても解けない課題なのである。

 

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「今年の誕生日プレゼントはSBR全24巻とニッシ―のベストがいいわね」

 

1月下旬に誕生日を控えた妻にプレゼントのリクエストを聞くと、そう答えた。みなさんご存知だとは思うが一応書いておくとSBRとはジョジョの奇妙な冒険7部のスティールボールランのことで、ニッシ―とは気に出したら止まらないAAAのボーカルこと西島隆弘氏のことである。kikuoとしては淑女に似合う品のあるものを差し上げたかったのだが、シュウちゃんの入院付き添いもあることだしさ!という印籠を掲げられては断ることはできまい。楽天ブックス大人買いし、妻へ献上した。

 

このような経緯があったため、今回の入院は少し気が楽かもという雰囲気が出ていたのだが、入院しないの越したことはない。自宅でシュウを寝かしつけた妻はいま、過酷極まる北アメリカ大陸横断レースへと参加するのだった。

 

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姉たちはシュウが入院とならず、残念そうだった。

というのも彼女たちは普段、禁欲的な生活を強いられているため、ゲートキーパである妻がいない夜は、ジュース飲み放題、お菓子食べ放題、youtube見放題という、子ども三大放題を手に入れることができるのだ。そりゃ入院して欲しいよな。

シュウの入院を指折り数えていた姉二人に、日帰りで済んだことを伝えると、よかったねーシュウちゃん!。予想外の反応に、お姉さんになったなあとしみじみしていると「でも、お菓子は買ってよね」だって。よく分かってるわ。

 

youtubeのひまわりチャンネルを見続ける姉たち。

スティールボールランを爆読する妻。

BGMはニッシ―の「花cherie」

 

なんとかく肩身の狭い思いをするkikuoとシュウであった。

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プロフィール

kikuo_tamura

社会福祉士/非営利組織専門の広報戦略コンサルティング会社 JIGコンサルティング代表 https://www.jig-consulting.com/

2016年6月、重症新生児仮死にて長男が生まれたことから、医療的ケア児関連に特に興味があります。

趣味は登山、トレイルラン、キャンプ、子どもを追い回すこと。千葉県生まれ。
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