余命宣告を受けた人はどのような生活を送るのだろうか

深刻な話のはずなのに気持ちは落ち着いていて、理解できない箇所は自分の中で反芻してから質問したりしている。主治医の顔も穏やかだし、病室の照明もいつもより明るく感じる。

何であんなに落ち着いていられたのだろうか。

先生との信頼が築けたからなのか、慣れたからなのか。もしかした無意識のうちに、思考を停止させていたからなのかもしれない。

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2月2日、シュウは脳のCT検査を受けた。何か異常があったというわけではなくて、定期検査。退院から半年後の状態をチェックしましょうという意味合いがあった。

結果は可もなく不可もなくといった感じだった。心配されていた硬膜外血腫*1の血腫量も体内に吸収されおり、新たな出血もなかった様子。これによって血腫により大脳の圧迫→脳幹が圧迫される、という連鎖は考えなくてよくなった。シュウは運動機能をつかさどる大脳の損傷が激しいため身体全体の麻痺が強いが、呼吸機能をつかさどる脳幹の損傷はなかったため、人工呼吸器をつけることなく生活できている。医療危機が増える可能性は低いという意味で、この結果は嬉しい限りだ。

 

一方で、大脳の萎縮は確実に進んでいた。この傾向は止まることはないという。大脳の萎縮が進むと筋緊張が強くなることが予想されるみたいだけど、親としては今でもかなり緊張が強いんですけど~と言った感じで、ショックを受けるわけでもなく、時期が来たらまた治療方法を考えましょうという結論に至った。

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過去に尿路感染により発熱し入院したことがあった。

 

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この日から予防的にお薬を飲んでいて、様子を見守っていた。尿路感染からの発熱は11月以降起こしてなかったけども、入院が長引いたこともあって、 尿道に造影剤を入れて経過を確認することになった。

 

結果は膀胱尿路逆流症*2

簡単に説明すると、おしっこが腎臓まで逆流してしまう病気で、改善されないと最悪の場合、腎不全となる。状態は右の腎臓がステージ5、左が2(5が一番悪い)。手術すれば改善される病気なのだけど、厄介なのはシュウの場合、脳性麻痺を由来としている可能性が高いというのだ。。つまり手術しても繰り返すことが考えられ、そうなると痛みを伴ってまで手術を選択するのはどうなんだろうと思ってしまう。

 

さらに手術自体にもリスクが伴う。リスクとは手術後は呼吸器をつける可能性もあるということ。手術は全身麻酔にて行われ、気管挿管により呼吸を保つことになる。健常な子であれば、術後はスムーズに抜管できるのだが、もともとの呼吸が弱い子供は、自発呼吸へ戻らないこともある。先生曰く「低く見積もっても1〜2割は呼吸器を付けることになる」。

 

では手術せずに、服薬だけの治療を続けた場合はどうか。もちろん服薬で良くなることもあるが、良くならない場合は腎障害、腎不全を待つことになる。腎不全となった場合は透析になるのだけど、重度の脳性麻痺の子が透析を行うのは延命になると先生ははっきりと言った。この先生は病気のこと、治療に伴うリスクのこと、親の希望や生活環境などあらゆるものを理路整然とテーブルに並べて、最終的な決断を我々に託してくれるからとても信頼できる。先生はきっと、命を救うことが第一義とならない場合もあると考えている。医療者としては口に出して言えないだろうけど。でも僕はその考え方には共感していて、だからこそ信頼しているのだと思う。その先生がはっきりと延命と言うのだから、本当に苦痛しかないのだろう。

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当面は予防内服を続けて、経過を見守ることになった。次の検査は今年の5月。その時の状態で腎臓の予後は推定できるため、結果次第ではシュウの生きられる時間が明確になる。

 

ここ最近のシュウは呼吸も安定して、吸引の回数も減ってきていた。体も大きくなって、目が合う回数も増えた。生活面でもシュウを育てていくため、親のどちらかが退職を余儀なくされても、5人で暮らしていく目処が立っていた。このままはんなり進んでいくのかなと思い始めていた矢先の出来事だった。病状の説明を受けていた時はとても冷静だったのだけど、いま走り書きしたメモを見返してどうしようかなあと考えようとしても、なかなかまとまらない。予防内服で良くなる可能性もあると話していたが、どうしても悪い方へ考えてしまう。

 

余命がはっきりとわかった時、どのような生活を送ればいいのだろうか。普通に暮らせばいいよねと考えていたけど、時期が明確にわかってしまうと、ちょっと無理してでも思い出を作った方がいいのかなと悩みが生じる。例えば有給や貯蓄を使いまくって旅行へ行くとか。2012に亡くなった流通ジャーナリストの金子哲雄さんは、余命がわかると自分の死をセルフプロデュースしていたけども、同じように子供の死に対して生前から葬式の段取りしたり通夜で読む手紙に筆を走らせたり、お寺さんに戒名のお願いしたりなんてできないよなあ。シュウには何をしてあげれば良いのかなあ。

 

とりあえず、穏やかじゃない!

 

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プロフィール

kikuo_tamura

社会福祉士 / ソーシャルワーカー

H28年6月、重症新生児仮死にて長男が生まれたことから、医療的ケア児関連に特に興味があります。

趣味は登山、トレイルラン、キャンプ、子どもを追い回すこと。千葉県生まれ。
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