障害者と健常者の接点を探る

主夫による脳性麻痺の子供の話。ご意見ご感想頂けると大変嬉しいです。m.jigglerアットマークgmail.com

医療的ケア児を育てながら働くにはどうすればいいのだろうか

平成26年にフローレンスという法人が、医療的ケア児を長時間預かる施設、障害児保育ヘレンを開園しました。現在は施設は3箇所に増え、順次拡大する予定だと言います。また、平成28年5月障害者総合支援法が改正され、「医療的ケアを要する障害児」という文言が法律へ明記されました。これにより、今まで制度の狭間に落っこちていた医療的ケア児に支援の手が差し伸べられようとしています。法改正に合わせ、僕の住んでいる市でも行政主導で医療的ケア児支援のための連携推進会議が設置され、実数の把握や(これまで市は把握すらしていなかったのだから驚きです。。)ニーズ調査や課題抽出を行う予定です。数年前まで考えられなかったことが次々と起こり、医療的ケア児にとっては大きな転換期を迎えています。

そんな節目の時期に医療的ケア児としてシュウは生まれてきました。20数年前から医ケアの子を育てている先輩ママに話を伺うと、当時は全てが家族任せだったと言います。訪問看護も往診もなし、いつ呼吸が止まるかもわからない恐怖に怯え、常にバギングできる体制にいたそうです。社会にはいないものとして扱われていたと仰っていました。そんな時代から比べると、現代は天と地ほどの差があるのでしょう。子どもへの支援体制は、確実に手厚くなっています。この時代に生まれたかったわ〜としみじみ話す姿がとても印象的でした。

 

一方で視点を親に移して考えると、まだまだ課題は山積みだなというのが正直な感想です。支援体制の強化はとってもありがたいし、それによって健やかに育っていくのであればとても嬉しいのですが、健常児を育てるように夫婦2人がフルタイムで働くこと難しいということです。

 

「こんだけ入院が多いと働くなんて無理だよねー」と先日ある医ケアママが半ば投げやりに話していましたが、まさしくその通りで、シュウは在宅生活を始めて4ヶ月経ちましたが1/3は入院しています。自宅近くにヘレンのような保育園ができても、フルタイムで働くのは現実的ではありません。仮に体調が安定し保育所へ入れたとしても、学齢期になると、親の付き添い問題が発生します。特別支援学校では、医療的ケア児は基本的に付き添いが求められますし(常にではありませんが)、学校と障害福祉サービスを組み合わせても、17時前後には自宅に戻ってきます。特別支援学校卒業後はというともっと大変で、医療的ケア児を受け入れる施設はほとんどありません。このように、課題が解決する!と期待できても、ライフステージが変化していくごとにまた新たな問題に直面するという現実があるのです。医ケア児の転換期にある今を生きていると色々と期待してしまいますが、法律を元に運営されていく公サービスなのだから劇的な変化は期待できない、というの事実をまず受け入れる必要があるのでしょう。

 

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とまあ悲観的なことばかり書きましたが、別に愚痴を吐きたい訳ではないのです。本エントリは、公に過度な期待をせず、現状でもできることはあるのではないか、ということを言いたいのです。

 

その昔、仕事といえば9時〜18時を基本とし、夜中は仕事をする時間ではありませんでした。例えば、仲間や取引先とのコミュニケーションを必要としない事務処理的な仕事は、本質的には時間の拘束を受ける理由はないはずですが、会社の労務規定の定時が9時〜18時であれば、その時間内にする他ありませんでした。

しかしITが発展した現代において、今まで使うことのできなかった時間を使い、場所を選ばず誰でも仕事ができるようになりつつあります。その最たる例がクラウドワークス。労働力の叩き売りという批判もありますが、お金にならなかった時間を使い、お金を稼げるようになったという意味において、とても画期的なサービスであるように思います。時間を細切れにし、その短い時間を使って仕事をするというスタイルは今後も加速していくはずです。医療的ケア児を育ててみて分かりましたが、物理的な移動が制限されるだけで、家では意外に自由な時間があったりします(あくまでうちの場合ですが)。この時間を使い、仕事ができる可能性があるのです。

 

また、ITを使わない別の道だってあります。例えば、介護ヘルパーになって福祉サービスとしてその手技を他の子に提供するというのはどうでしょうか。自分の子へ行う医療的ケアはお金にはなりませんが、ヘルパーとして他のご家庭へ入り医療的ケアを提供すればお金が貰えます。自分がヘルパーとして出ている間のケアは、他のヘルパーさんや訪問看護さんに任せればいい。今は研修さえ受ければ、ヘルパーでも喀痰吸引ができる時代です。そもそも医ケアのスキルは十分に持っているのだから、使わない手はありません。やれないことはないのです。

 

制度、法律に振り回されがちな医療的ケア児を育てる家族だって、主導権を持って生活していく方法はあるはずです。まだまだフルタイム並みに、とまではいきませんが、上記した働き方を真剣に考えていったほうが現実的だし、公に期待も依存もしない分、精神的に随分楽だなーと僕は思うのですが皆さんはどう考えますか。

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プロフィール

kikuo_tamura

社会福祉士/非営利組織専門の広報戦略コンサルティング会社 JIGコンサルティング代表 https://www.jig-consulting.com/

2016年6月、重症新生児仮死にて長男が生まれたことから、医療的ケア児関連に特に興味があります。

趣味は登山、トレイルラン、キャンプ、子どもを追い回すこと。千葉県生まれ。
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