【障害者が出てくる本の書評】ワンダー Wonder
オーガストは普通の男の子。ただし、顔以外は。
街で障害者を見かけた時、どういった反応をすればよいのか悩んだことはありませんか。
その答えのヒントが、この本には書かれています。
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障害福祉の枠で働いている僕は、少なくとも障害について、差別は持ち合わせていないと思っていました。しかしシュウが重症新生児仮死児で生まれ、今後健常児のように生きてはいけない、医療的ケアが必要になると主治医から説明された時、涙があふれました。涙の理由は様々ありますが、その1つに『障害が残るのか』というのものが含まれていたのは紛れもない事実です。そして、『障害』という言葉を使い、シュウの状況を説明することに抵抗がある自分にも気づき、傷つきました。自分がしてきた仕事は一体なんだったのだろうか。曲がりなりにも専門職として働いてきて、障害福祉に対してそれなりの自負がありました。しかし、シュウがおかれている現実を目の当たりにして、3匹の豚の末っ子のようにコツコツを築きあげてレンガの家が、オオカミよりも巨大な『何か』に、いとも簡単に崩されました。しかもその『何か』は、実は自分の中で、同じようにコツコツと育ててきたものであるから救いようがありません。そんな状況になった時、僕はワンダーWonderの世界を思い出したのでした。
オーガストの視点だけで書かれているのではなく、親、きょうだい、友達の視点でも書かれていて、『障害とは何なのか』ということを多角的に考えさせられます。
装丁に使われている青色はとてもきれいで、読後の気持ちを表しているのだろうと想像します。
児童書に分類されているのですが、誰にでもおすすめできる、素敵な本でした。