【相模原・障害者施設の入所者刺傷事件】根本にあるのは被疑者の障害者差別だって意見をよく見るけど本当にそうなのかな?

僕は障害福祉業界で働いていて、被疑者と同じ精神疾患を持つ方と日常的に関わるし、被害にあわれた重度の障害を持つ方や障害者入所施設へも出入りしたりする。先日生まれた息子も成人まで成長できれば高い確率で重度障害者となるため、被害者像と合致する。そういったある意味公平な視点でこの事件を見ることのできる立場にいる人間として、ニュースを見て少し違和感を感じたことを書いてみたい。

 

それは、事件の根本にあるのは被疑者の障害者差別だって意見をよく見るけど本当にそうなのかな?という疑問である。

 

過去にも少し触れたが、なぜそう思うのか具体的に書いてみようと思う。

 

kikuo-tamura.hatenablog.com

 

 

※このエントリは被疑者を擁護したくて書いたものではありません。このような事件が起きたことは本当に悲しく思いますし、複数人に重軽傷を負わせ19人もの命を奪った犯人にはきちんと罪を償ってほしいと思っています。あくまで、被疑者の障害者差別は関係あるの?という点にのみ関心を払い読んでいただければ幸いです。

 

事件の背景にあるものは何だ?

被疑者事件前の言動などから、ヘイトクライムであると報じるメディアが結構ある。そしてyahooニュースのコメント欄を見てもそういった意見は多い。

例えばこの社説。

www.okinawatimes.co.jp

自分勝手な思い込みを絶対化し、他者への寛容をなくする。今回の事件は障がい者を標的にした犯罪「ヘイトクライム」である。

容疑者も取り調べに際し「障害者なんていなくなればいい」という発言もしているし、過去の言動も含めて、ヘイトクライム」ととられても仕方がない。

 

ではなぜ僕が違和感を持っているかというと、その報道の仕方だ。詳細は後述するが、障害者をターゲットにしているからといって単純にヘイトクライムとしてメディアが扱うのって、自分たちが障害者差別をしていると言っているようなもんじゃん!と思うのである。

www.nikkei.com

 

妄想性障害と大麻精神病

妄想性障害とは、遺伝子や生活歴等の環境要因は関係なく(現時点では証明されていない)、予防も出来ないし、避けることも難しく、どの国や地域にも一定程度の人が発病する病気である。本人に病識こそないが、普通の生活を送れるし、妄想性障害を原因とし殺人まで犯してしまうなど聞いたことがない。

 

大麻精神病に関しては、大麻の使用はあくまで任意、避けようのない妄想性障害と性質は異なる。つまり禁止している薬物を使用している時点で言語道断だが、大麻の使用というだけで殺人とまでは行かないように思う(幻覚症状はもちろんあるが)。

 

あくまで僕個人の臨床経験に基づく印象だが、ニュースから見えてくる過去の被疑者像(高校生までは好青年だったが、20代前半から様子がおかしくなってきた)や衆議院議長に書いた手紙の内容や文字をみていると、妄想性障害がベースにあり、大麻を使用し躁状態になって犯行を行った、というのではないかなと思っている。

 

妄想性障害という精神疾患、その内容は多種多様で、例えば、ぱるるが自分を好きだと思っていると確信していたり、誰かが盗聴していると警戒していたり、石原慎太郎が受け継いだ3000万円の遺産を狙っていると吹聴する人もいた。それら内容と本人を関連付けることのできるエピソードは全くなく(例えば、自分はリベラルで保守思想のある石原慎太郎が嫌いだったとか)、なんでこんなことを言ってのかなと毎回不思議に思うほどであった。(それが障害たる所以であるのだろうけど。

 

妄想性障害: 統合失調症と妄想性障害: メルクマニュアル 家庭版

大麻精神病 - Wikipedia

 

差別はどこにある?

 

つまり、被疑者の妄想内容と対象がたまたま障害者だったってだけで、被疑者の障害者観は関係ないのではないかと思うのである。もちろん社会に存在する障害者に対する空気感をや置かれている現状を敏感に感じ取って、それが妄想症状に結び付いたと言われてしまえばそれまでだが、被疑者は教職免許を持っていたようだし、仮に教師になっていたら「今の子どもはネットにばかりのめり込みリアルを感じていない、俺がリアルを感じさせてやる」とかいって子どもを対象にしていたかもしれないし、「教職は閉鎖的だから社会の目にさらさなければならない」とかいって教師を対象にしていたかもしれない。で、こうなった時に、子どもへの差別だ!とか、教師への差別だ!とかなるだろうか。やまゆり園に勤める前は運送業に従事していたようだが、そこで事件を起こしたら運送業界への差別だ!てなるだろうか。絶対そうはならないだろう。

 

子どもや教師がターゲットだった場合差別だとはならず、障害者ってだけで差別と結びつくのはなぜだろう。理由はひとつ、社会全体が障害者に対して差別していると認識しているからだ。

 

であるのにも関わらず、障害者をターゲットにしたというだけで、障害者差別が根本にあるヘイトクライムだと報道するのは、社会に、一人ひとりに、障害者に対する差別が存在するのにも関わらず、それを覆い隠し、被疑者のみが障害者差別をしているという、ある意味責任転嫁だ。ずるいなと思う。

 

被疑者の障害者差別と表記してきたのはこれが理由である。

差別は一人ひとりの中にあるのだ。

もちろん僕もその一人だと思っている。

 

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余談だが、今後の展開を予想すると、

事件の特殊性や措置入院の経緯を考えると、今後は医療観察法(簡単にいうと犯行時に精神的に破たんしていて自我のコントロールが効かない状態であった場合、その罪を不起訴や無罪にできる法律)に基づく診察が行われると思われるが、それはあくまで形式上で、犯行は周到に計画され、警察ともコミュニケーションとれているため、不起訴や無罪にはならず、普通に罪に問われていくのではないかと想像している。

 

 

 

 

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プロフィール

kikuo_tamura

社会福祉士 / ソーシャルワーカー

社会福祉法人 松の実会 評議員 / NPO法人 こども子育て・発達支援研究会 監事

H28年6月、重症新生児仮死にて長男が生まれたことから、医療的ケア児関連に特に興味があります。

趣味は登山、トレイルラン、子どもを追い回すこと。1985年千葉県生まれ。
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【m.jiggler@gmail.com】