断髪式
癖っ毛、剛毛、毛の量が多い。
お洒落を気にする男子ならば、自分の頭髪がこの性質のどれか一つでも当てはまっていると、それだけで女子にモテないんじゃないかと不安な夜を過ごすことになるのではないだろうか。髪型に自己のアイデンティティを重ねている拗らせ男子は、思いのほか多い気がする。ショーウィンドウごとの髪型チェックも、強風が吹くとまず髪型を守ろうとする行為も、原付を乗るヤンキーがヘルメットを被りたがらないのも、そのためだろう。
ちょっとでも気になる点があると、それを改善するために髪の毛をすき、パーマネントウェーブを当て、強制縮毛を施し、赤く染める。ワックスで固める。当然、シャンプーやリンスにもこだわる。モッズヘアーかアジエンスがデフォルト。リンスのいらないメリットなんて考えられない。就寝前のヘアケアも欠かさない。穴が開くほどヘアカタログを見して、ドッグイヤーを作り、情報収集にも余念がない。そして一番のお気に入りのページを切り抜き、持参し、この髪型で!と美容師に提出したりする。
そんな拗らせ男子を見るたびに、無慈悲で非情なる現実を教えたくなる。
モデルがかっこいいのは髪型ではなく顔だぜ、と。
---
癖っ毛、剛毛、毛の量が多い。
シュウはその三重苦を背負い生まれてきた。
まるで強欲なるお洒落男子の大罪を、一人で背負っているかのようである。
日々繰り広げられる頭髪の波状攻撃。例えるなら、荒野の荒くれ者だろうか。その傍若無人な暴れっぷりは凄まじく、風呂上がりにドライヤーを使わずに放っておくと、頭皮の上はルール無用の残虐ファイトと化す。大仁田厚も青ざめるに違いない。
しかし、シュウはよく分かっているのだ。男は髪型ではないということを。男子がいくら髪型に気を使っても、女子は大して気にしていないという事実を。費用対効果が著しく低いということを!
だからヘアカタログなんて見ないし、ヘアサロンにも行かない。当然、ケラスターゼに解答を求めたりしない。1歳8ヶ月にして漢となるシュウ。熱血硬派くにおくんの跡目間違いなし。
---
そんな訳で、自宅で髪の毛を切った。
最近は特に前髪が長く、暴れる君だったのでヘアピンで留めたりしていた。
ピンを取るとこんな感じ。
リーゼントをおろしたみやぞんに似ている。
断髪には下記の工具はを使用した。
左から、
①バリカン
電気屋で買ったちゃんとしたやつ。安心の日本メーカー。水洗いOKなのでメンテナンス性抜群。
②100均で買ったすきバサミ
シックな出で立ちで好感度◎。
③姉が工作で使ってるハサミ
先端が丸くて、刃渡りも短いので安全性抜群。
④スタジオアリスでもらったクシ
家にあったやつ。
これらを駆使して、シュウの断髪式を執り行った。
---
本来なら慣例通り、両国国技館で執り行いたかったが希望叶わず。
髪の毛が飛び散るのが嫌なので、風呂場で行った。切ってすぐに洗髪できるのし、一石二鳥。
また、呼吸器系に髪の毛が入るとマズイので、寝てる時を見計らって行った。
まな板の鯉状態のシュウを眺める姉二人。
「どう料理されるか楽しみですな。」
「煮付けが希望ですな。」
ちなみに断髪式なので女人禁制。彼女たちには写真撮影を依頼した。
12mmのバリカンを使い、ウィンウィンやる。なんとなくのイメージはツーブロック。直前にググって画像見ておいたから大丈夫でしょう。
こういう時にコープのチラシって凄い役立つ。髪の毛を直置きすることはないので、床の掃除が格段に楽になるし、断髪後はチラシを丸めてポイだ。無駄のない、美しすぎる行動のデザイン。
本来であれば商品宣伝という、売り手と買い手のコミュニケーションツールとして使われるチラシが、髪の毛受けという掃除用具として活用される。使途の新たな提案と言うべきか。こういった事例はビジネスの世界でも少なくない。
例えば、全国にメガネチェーン店を展開するのJINSは、パソコンから発するブルーライトを軽減する「JINS PC」を開発した。それまでは視力の矯正という、医療機器でしかなかったものが、現代人のニーズに即したアイテムへと昇華したのだ。「JINS PC」は、今まで目が悪い人しかかける機会がなかった「メガネ」という商品の新たな使い方を消費者に提案したという点で、革命的であった。その後の業績拡大は、皆さまの実感している通りだ。どこに行ってもJINSはある。
コープのチラシ使途における新たな提案。kikuo家の風呂場を震源地に、チラシ業界に激震が走るかもしれない。
話が逸れた。
引き続きちゃっちゃーとやる。バリカンの威力を見せつけられる。バリカンすげー。
ハサミを使い、上部を切断する。ハサミの安全性を見せつけらる。ゆび挟んだけど切れなかった。
前髪も切る。
こういうのは勢いが大切だと思う。我が切断に寸分も悩みなし!
で完成。
大銀杏が切り落とされて、とてもスッキリした印象。長年頭の上にあった剛毛が切り落とされて、これまでの剛毛人生の思い出を噛み締めているのかもしれない。目をつぶり考えこんでいるようだ。
あと、相変わらずポチョムキン人形に似ている。鳩胸感がすごい。
横からの写真。
ツーブロック風。
よく見るとがたがただけど、それなりに見える。
というか、シュウはそもそもがかっこいいので何してもかっこいい。
そう、男は髪型ではなのだ。